石井 治美さんを迎えて
勝華園友の会 9月例会のようす
 勝華園友の会9月例会は、愛知県の植治園より、園主の石井 治美さんにおいでいただき、「改作」を主とした講習会を開きました。
 9月1日(日)、石井さんは、「近代盆栽」の書籍の表紙に登場する「仁実ちゃん」をアシスタントとして同行、お二人でおいでくださいました。
 待ち受ける勝華園友の会会員や、阪南、八好会、雅貴の会など、石井さんが来られることを聞きつけた愛好家さんは、自分の「困った樹」を持ち寄って、石井さんを迎えました。



 勝華園園主の紹介で、講習会はスタートしました。「今日持ってきた樹は、全部近くに置いて。見える位置に置いてくれたら、やりながら考えられるから。」と精力的にドンドン改作を始められました。

 講習の間、遠い人にも見えるように、石井さんの手元はすべてビデオで撮影され、同時にスクリーンに拡大して映し出されました。
石井さんの手元が見える近いところには、友の会会員が座りました。“仁実ちゃん”の姿が見えます。
会場内には、橋本三四士さんの姿が。「石井さんの通訳で来ました」と冗談を飛ばす橋本さん。勝華園には、小品盆栽業界の若手トップ(?)がよく集まって情報交換がおこなわれます。

 この樹は、根来さんの持ち込んだ杜松。3幹ですが、裏、表をどちらにするか。3幹のまま残すのか。
石井さんは、どう料理するの?
 いつの間にか、隣に座ってサポート知るのは、われらが“勝ちゃん”。勝華園園主のお父さん。目利きは抜群。
お父さん楽しそうに、時には石井さん以上にしゃべりまくります。
 この時期に改作するのがちょうど良い杜松の樹は、ドンドンと手が入れられて本来の裏側が表に決定され、右の幹が根元から取られました。
残された細い小さな枝はこのまま持ち込んでも太らないで、むしろ、枝元から出てくる芽が伸びるそうで、それを切らずに伸ばせば、太い枝ができあがるそうです。
根から遠い位置の枝は成長が遅くなるので、近くの枝は短く切っていって遠い枝の生長を促せばいい、と教えてくれました。

*** 次の樹は、田中さんの黒松です。 ***

 友の会の田中さんの黒松。幹上部に魅力的な曲があります。「この曲を、どう見せるかが改作のポイントだよ。」と石井さんは言って、どんどんと不要と見た枝を抜いていきます。「枝はどの程度までなら切っても大丈夫ですか?」の質問に、「2/3ぐらい切っても大丈夫。でも、エゾマツは1/3以上落としてはダメ。」との答え。
 田中さんの希望を聞き、
幹曲げのため、のこぎりで1/3まで切っていきます。そして「針金、鉄のを持ってきて」と石井さん。誰もが、何のために?、と思ったでしょう。すかさず、「幹曲げのため引っ張るには、アルミは弱い。銅線も伸びるし、ねじると切れやすい。鉄が一番いい。」との石井さんの解説。みんな、納得。
幹を切った時、「どれぐらいまで、切っても大丈夫なんですか?」の質問には、「1/3ぐらいまでなら大丈夫。しかし杜松などの繊維質やネジ幹の樹は、切るとその上部が枯れてしまうから、切ってはダメ。」
 石井さんと園主の2人がかりで曲げられた黒松。上の画像(元の位置からだいぶ傾けられました)の位置が持ち主の選んだ正面。「どちらを正面するかは、これからでも変えられるよ。」と、まだ将来の細かな改作の余地をちゃんと残した石井さん。 強い改作だったので、植え替えはしないでおきました。


 こちらを正面にしてもOKです。途中、黒松の葉は、全体の強さを調節するために、頭の方の葉を透かされ、短く切られました。 この後も、別の黒松を何度も何度も押し曲げてから、針金で引っ張ったりして、ドンドンと曲付けしていく石井さんの力技が見られました。

 石井さんの改作講習に圧倒され、午前の講習会はいったん終わり、昼休みに。
 集まった皆さんは、食事の後、園内での買い物のひととき。あちこちで、「この樹は、こうすればもっと良くなる。」とか、楽しい声が上がりました。

「山本さん、いい樹が見つかりましたか?」




 石井さんは、昼食後もすぐに質問攻めにあい、休憩する時間もありません。
しかし、四国から来られた島さんや他の業者さんとも、情報交換もバッチリ。

 ところで、島さんは、今年2002年の作風展で「内閣」を取られたそうです。黒松での栄冠、おめでとうございます。作風展の内閣が、近畿より西で取られたのは初めて。島さん、すごい!!


 「さあ、午後の講習を始めるよ」と、園主の一声。園内に散らばっていた人たちも、足早に講習会場に集まり、さあスタート。

次は、ヒロやんの。朝一番に改作してもらい、ヒロやんが細かいところを手入れしていた樹の仕上げをします。 「真柏の改作を考える時、根張りは見なくてもいい。幹のシャリをどう見せるかが、一番大切。」と言い切り、樹を回しながら、良いところを見つける石井さん。時には冗談も入れての解説だが、樹を見る時は真剣。(あたりまえですね〜!)
 「真柏の葉を摘む時は、葉の先だけを摘み、その元に、左右に伸びていく細かな枝がないとダメ。そうしないと杉葉が出るよ。」と、石井さんの言葉には、“植物の生理”を知り尽くした経験に裏打ちされたものがある。


植え替えの時は、このように傾けます。

次は、真柏の素材にあらかじめ針金をかけたものです。

 真柏は、たくさんの方が悩んでいるようです。
 根来さんの真柏の枝には、すべてアルミの針金がかけられています。
“アルミ線が細いな。もっともっと太いのをかけて、細い枝が生長して、針金が食い込んでくると、おもしろい模様ができるよ。今のアルミ線じゃ、細くて、できる模様は面白くないよ。はい、終わり。」と、あっさりと。これでも細いんだな、と実際に見て言ってもらって分かってくるんですね。

下の写真は、勝華園友の会のメンバーです。石井さんや仁実ちゃん、八好会の人たち、そして今年の作風展での“内閣」獲得の栄誉に輝く四国の島さんが一緒に写っています。ヒロやんよりも、・・・


改作講習会「石井 治美の世界」を終えて、みんなで記念撮影。みなさん、ありがとうございました。
講習会の間、石井さんはずっと立ちっぱなし、しゃべりっぱなしでサービスしてくれました。
ご苦労様でした。

小品盆栽界の若手を引っ張る石井さん。これからもよろしくお願いします。
inserted by FC2 system